渉外業務

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国際派司法書士の業務
山北英仁先生

渉外法務が司法書士を志したきっかけだったのでしょうか

大学を卒業してから個人の弁護士事務所にて12~13年ほど働いていたことがきっかけで、司法書士試験の勉強を始めて合格したのですが、当時から渉外法務をしたいというような明確なビジョンは持っていませんでした。

合格後すぐに弁護士事務所の中で開業し、その後行政書士試験にも合格していたのでその登録もしました。渉外法務については、NPO法人渉外司法書士協会の前身である法律英語実務研究会の事務局になるよう誘われたことがきっかけです。

出身が佐世保ということもあり、外国の方は身近でしたし、国内での業務を争っていてもしょうがないと思っていましたので渉外法務に携わるようになりました。渉外法務を行う上でこのダブルライセンスはプラスだと思っています。

どのような場面で複数のライセンス取得の良さを感じましたか

外国からビジネスに来る方に対し司法書士の知識だけだと、会社法・商法・商業登記法あたりの試験科目から登記を連想するでしょう。それは間違ってはいません。

しかし、その外国人である依頼者がとりあえず日本に設けた自宅に会社を作ろうとすると、ある問題にあたります。行政書士の仕事をご存知の方は想像し易いかもしれませんが、入管法上の在留資格選択の問題です。この場合は自宅ではなく別途オフィスを用意することが必要になるのです。会社法だけではこの問題には対応できませんね。この知識があることで適切なリーガルサービスを迅速に提供することが可能となります。

もちろん知識が重要なので資格を持つことは必須ではありませんので、行政書士に依頼することも当然できますが勿体ないですね。クライアントにも、分業によるたらい回しという迷惑をかけますし、行政書士の資格も持っていることでいろいろな手続きも一緒にやることができて非常にプラスになると言えます。

渉外法務とは

日本における法律問題について、外国人・外国企業との関連において、その法律問題を処理することで、その過程で外国法の知識を必要とします。経済取引の国際化が進み、多くの外国人・外国企業が日本に進出し、また日本人が海外で活躍する場も増え、それに伴い法律業務も国際化し、渉外業務は、ますます増加傾向にあります。

外国人の多くは、日本に司法書士・弁護士・行政書士・税理士・弁理士・公証人等の専門家が存在し、それぞれが法律問題に関与していることを知ってはいないのです。したがって、外国人が司法書士のところへ業務の依頼に来る場合、司法書士が関連する法律問題をすべて処理してくれるものと思っています。即ち、ワンストップリーガルサービスを求めているのです。

渉外と言っても取扱うものは日本の法律です。会社設立や営業所設置の登記も、外国語ができないだけで渉外弁護士が行っていたりもしますが、司法書士の本来業務である登記なので、もっとサービスできる、もっと積極的に司法書士がやるべきだとは思いませんか。

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渉外法務での留意点を教えてください

外国人が、司法書士事務所へ会社の設立の依頼に来た場合、又は外国企業より外国会社の日本における営業所の設置された場合を例に挙げてみましょう。

司法書士の勉強を始めている皆さんは、得意の会社設立登記・営業所設置をどうすればよいかが頭に浮かぶかと思います。ここでの留意点は、会社設立も営業所設置も日本でビジネスをする目的で依頼してきているということです。

日本でビジネスするためには、日本に在留して営業活動をする必要があることを常に念頭においていなければなりません。

また、司法書士試験の科目にもなっています商法・会社法・商業登記法のみならず、その周辺知識が必要になります。設立後も、自分の専門でない税務等で相談された場合は、税理士等に依頼することになるでしょうが、先にも申し上げたとおりクライアントは日本の細かい士業の分類を知らないことも多く、目的はビジネスですので、すべての窓口になることが求められます。他士業とのネットワークも大事です。

日本に在留する外国人(外国法人を含む)または外国に居住する日本人が当事者である不動産の所有権移転(売買・相続)を依頼された場合を例に挙げてみます。皆さんは外国人が印鑑を持っていない時どうしますか。この場合も民法・不動産登記法のみならず、法の適用に関する通則法をはじめ周辺知識や外国法を探すことも必要になります。

また、クライアントは何時までにどのような手続きをしていくのかという経過と時期を気にされますので、ここも留意点ですね。交渉ごとになりますと、そのスケジュールを計画するのが困難なものもありますが、デッドラインから逆算してスケジュールを作成し、実行する能力も必要になります。

そして、経過報告は常にしていないとクレームがすぐ来ますので、報告は忘れてはいけません。

渉外法務をする上で外国語は必要ですか

外国人・外国企業を相手にリーガルサービスを展開するのですから、外国語の必要性についてはよく聞かれるのですが、外国からビジネスに来る方々を対応するコミュニケーションが外国語になることもあると思います。外国語は出来るに越したことはありませんが、文書の作成は日本語文・外国語文を併記していきますので、作成能力は必要です。

確認しておかないと、後でとんでもないトラブルとなることがあります。細かい事項の確認は、対話・通話ではなく、メール等文書で確認をとるようにしています。「言った、言わない」の話になると困ってしまいますので、特に外国語となると自分の都合のいいようにしか聞こえないような、齟齬の発生を回避する為に、なるべく証拠として文書を残すことにしています。

渉外法務をどのようにして身につけるのでしょうか

昭和62年に、当時世界的製薬会社の日本現地法人の法務部長をされていた、当協会石田顧問より、「法律英語を学び、渉外法務をやりませんか」との誘いを受けたのが始まりですが、その後、NPO法人渉外司法書士協会を立ち上げ、以後23年間実務経験を持つ方を講師に招いて行っています。協会の会員も司法書士が大数を占めますが、税理士や弁護士の方も入って月3回のペースでの研修を行っています。渉外を実際業務展開している司法書士事務所・弁護士事務所や、外資系または商社系企業の法務部、国際行政書士協会でも経験できるでしょう。

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クライアントの獲得の為にされていることはありますか

依頼人は、日本に滞在する外国人、外国人を雇用する日本企業、外資系企業と様々です。依頼人を獲得する為には、いろいろな異業種団体への出席や各国大使館又は派遣された経済団体が主催するセミナーへの出席、渉外弁護士事務所・外国法事務弁護士事務所等へのコネクション、各種団体への登録等待っているのではなく、こちらから外へ出ていってネットワークを作成することは必要だと思います。また、インターネット・ホームページの作成や電話帳への掲載、名刺・事務所パンフレット作成の際にも、当然日本人だけを対象としたものではいけませんね。

これからの司法書士に必要なものは

弁護士と比較して、敷居が低く相談し易いというところを活かして「身近な相談者」として小回りがきくことを求められていると思います。また、渉外法務をはじめとしてコンサルティング能力があれば、いろいろと仕事に幅を生むことができると思います。

これから司法書士を目指す皆さんへメッセージをお願いします

これからは登記のみに限らず、合格後も広く浅くいろいろな専門知識を持つことが必要だと思います。ポイントは「合格後」というところです。仕事に活かす為に、受かってからも勉強していくのです。そして、知識を得ること以上に仕事のヒントを得るために、いろいろ勉強会、研修会等へ積極的に参加することも必要だと思います。外へ出る司法書士がもっといるべきだと考えます。活躍できるフィールドは多岐にわたっていますので、内に籠っているのではなく外へ出ていきましょう。

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