登記業務

TOP司法書士 > 登記業務
司法書士の王道「登記業務」のこれから
柏戸 茂 先生

司法書士を目指したきっかけは

 私はもともと司法試験の勉強をしていたのですが、結婚を機会に司法書士事務所の補助者として司法書士試験を目指すことにしました。

初めは、司法書士は手続業務というイメージが強かったのですが、勉強を進めていくと、手続以外にも活躍できるフィールドが多くて将来性や面白みを感じるようになり、司法書士を知れば知るほど奥深さを感じ、やりようによっては自分に向いていると思いました。

 補助者を1年やった後、試験合格までの2年間はLECでスタッフとしてお世話になり、主に問題制作等を担当していました。

 そこでは質問に即答することが求められたので、自分の試験勉強という時間がほとんど取れない時期でもありましたが、非常に鍛えてもらったと感じています。

 そして、平成2年に合格することができました。

先生は合格後すぐに開業されていますが、はじめはご苦労されることも多かったと思います

 私は合格してLECの講師等した後、翌年10月に地元でもあった港区青山に開業をしました。

当時はバブル経済が崩壊した時ですし、地元の友人もこの地から離れた者が多く、開業してから3ヵ月は仕事がほとんどありませんでした。

少しずつ仕事が来たのは、それから暫くしてからになります。

 今後、合格してからすぐ開業を考えている方には、1年以上どこかの事務所で実務経験やノウハウを積まれることをお勧めしています。

登記とは・・・

 不動産は一般に高額財産であり、特に不動産をめぐる権利関係は、円滑な取引やその安全性を図る目的から、所有者は誰か、担保に入っていないか等、それらの情報公開が必要です。土地や建物の所在・面積の他、所有者の住所・氏名等を公の登記記録というものに記録し、一般公開する法制度が「登記」です。

 登記しておかなければ、不動産に関して権利を取得した者(例えば土地の買主)は、折角買った土地を失うケースもあります。

よって、不動産取引ではその場で司法書士に登記を依頼するのが通常ですし、融資を行う金融機関や仲介業者等も、法律上問題のない確実な取引をする為に司法書士の関与を求めてきます。

 商業登記の必要性も取引安全の為です。目に見えない会社と多額・継続的取引をする場合、通常はその会社(所在・役員構成・資本金の額・事業内容等)を調査します。会社と称する者と取引をしたが、実際その会社が存在していなかった・・・では不測の損害を被ることになります。

相手方とすれば、その会社について出来るだけ多くの情報を登記によって公開してほしいものですが、対象となる会社にとっては企業秘密もあり、全てを公開するわけにもいきません。

そこで、商業登記においては法律上定められた事項についての登記が義務付けられています。

ページトップへ

登記件数は減少傾向と聞きますが、

 登記申請代理人として登記業務を行う司法書士は、自ら何かを動かすことはありません。

景気等の経済の流れ・世の動きには勝てないのです。

 不動産登記では景気によって左右されていくのは仕方のないことでしょう。

不景気の現在では登記件数は減少傾向ではありますが、司法書士の関与率が9割を超えていること(日本司法書士会連合会事業報告より)から見ても、不動産取引のあるところに需要はあるでしょう。

 今後は、登記申請代理に限らず、その前提となる実体への関与も含めた不動産取引のトータルリーガルサポートの展開が期待され、はじまっています。

 商業登記では、会社は毎年決算期がやってきますので、その時点での状態に応じて何かしらの登記(役員変更をはじめ、増資・減資等)が発生します。

会社法施行規則の改正が相次ぎ、会社経営者や会社の法(総)務担当者等もついてこられないというのが現状です。

 また近時においては、コンプライアンスの重要性が高まっていることもあり、経営者にとっては定款を一つ変更するにも専門知識を持った司法書士へ相談・依頼しようと需要は高まっています。

オンライン申請がスタートして業務に変化はありますか

 不動産登記については、平成17年3月からスタートしました。

オンライン申請が可能になったことによって、当事者やその代理人である司法書士は、登記所に出頭する必要がなくなりました。

それによって、時間や経費をかけなくてよいというメリットがあります。

 当初は、オンライン申請のトラブルも多少なりともありました。

しかも、すべての書類を電子化する必要があったことや電子証明の問題、金融機関から要求される登記申請したことを証する受領証が発行されないこと等があり、活用されませんでした。

 平成20年には特例方式(一部の書類を提出し、一部電子書面化しての申請方法)が認められましたが、それでも東京法務局管内では申請全体の1割台という状況です。

登記所の統廃合が進んでいますがその影響について

 昭和30年には全国2,085庁あった登記所が、平成22年4月現在462庁にまで減少しています。

また、商業登記所の集中化構想により、商業登記所は既に80庁に統廃合進行中です。

 オンライン申請ができるようになって、司法書士事務所が登記所の近くにある必要性がなくなってきていることもあり、都市部へ集中する傾向も出てきています。

ページトップへ

今後の司法書士が求められることは

 不動産の資産価値は失われていませんので、登記の依頼がなくなるということはありません。また、市民の方々も登記への意識が高まってきているのを感じています。権利保全(予防司法)が重視される時代へと変容しているのです。

 弁護士と比較しても敷居が低く、登記等の形にする力を持つ司法書士に期待されていることは、その前段階での活躍だと思っています。

 前述しましたが、不動産取引では結果である登記の申請依頼のみに限らず、その前提段階の登記原因となる実体関係への関与、つまり契約当初からの総合的な法的支援です。

 商業登記についても、結果である登記の申請依頼のみに限らず、その前提段階である各種手続についてクライアントの話を聞き、「何をしたいのか」、その手続をすることによるメリット・デメリットをきちんと把握した上で意思疎通を図り、それを実現・登記に表現することが職務だと考えます。

経営者は会社の維持と発展の為に尽力されますので、その法的支援・予防司法へのコンサルティングまで拡げて中小企業の法務コンサルタント的業務等も司法書士のになうべきものとなっていくべきです。

司法書士を目指す方へのメッセージをお願いします

 司法書士の業務は、そのフィールド自体も拡大しており多様な活躍ができ、市民から期待もされています。

 先輩方から「市民に身近な法律家」として築いてもらったものを基に、それにとらわれずに多方面に業務展開してもらいたいです。

 現在、深刻な不景気であり甘くはありませんので「競争」にはなりますが、新人の方にはチャンスと捉えていただき、早く合格して実務でご活躍いただきたいと思っています。

ページトップへ