1つは、発明者を保護する立場であり経営者をサポートする立場であり、労働者側の論理と企業側の論理の両方に携わる職業であるところだと思います。特許権を取得すれば、発明者には報奨金が支払われます。これは、発明者の保護にもつながります。会社を守るのはもちろんのこと、労働者の権利もきちっと確保していくことができるというところに魅力があります。
もう1つは企業が世界的に成長していくところに関わることのできる面白みと夢があることです。世の中に出現する前のもの、すなわち「世界初」のものを自分たちが扱うということは常に未来志向の仕事であるということです。こんな素晴らしい仕事はないです。
常に企業活動に活力を与える部分、夢を与えることを弁理士は担っています。発明者、企業担当者が考えたこと以上のことを弁理士の僕らが膨らませて、特許請求の範囲というものを作成していくというところには大きな夢があります。
法律家としても、知的財産という分野で法的に権利を守り企業を支えるというところを弁理士が担っています。これもまた素晴らしいですね。
僕は、理系のことや物作りが好きだったので、それに関連する職業はないかな、自分で独立してやれるものはないかなと探ました。それだけでは面白くないので、その中で夢を求めることができるものということで弁理士を見つけました。
結局のところ、自分がすることも企業がすることも、夢を具現化するツールだろうと思ったときに法律が先行して、法的に知的財産を守り、企業に活力を与えていく職業、それが弁理士だった。これが弁理士になる動機ですね。
大学を目指すときから知的財産の講座がある大学を高校で探してもらって狙っていきました。
父親が弁理士であったということもあるのですが、実を言いますと、親の知らないところで弁理士試験に受かっています。当時、父親から「受かったのか!?」と驚かれました。
というのも、父親の後を継ぐという気は無かったもので……もともと兄が父親の仕事を継ぐと思っていましたから。僕は早く弁理士になって早く好きなことをやりたいと思っていました。
知り合いの弁理士の先生には鈴鹿サーキットでレーサーをしていたという先生がいました。弁理士でお金を稼いで、そのお金を車につぎ込んでレースをする。すごい夢があるじゃないですか。
事務所はオールマイティですね。各分野にエキスパートがいます。電気・電子の話をしていて、化学の話になったら化学に強い人を呼ぶというようなかたちです。
僕自身は化学の分野以外はすべてに携わりました。訴訟もかなり経験しました。弁理士の中では訴訟経験がかなり多い方と思います。
最初は名古屋市工業研究所・財団法人名古屋市工業技術振興協会というところで、会社の社長さんを相手に知的財産の講義を始めました。知的財産は経営の1つだという考え方を米国で学んだので、経営者に知的財産を教えなければならないということを感じていたためです。この社長クラスの講義を数年したところで、経営者の方々から、自分たちは理解したので部下を教えてください、といわれ、年30回の知財担当実務者養成講座が開設されました。現在は1回の時間数を長くし、回数を14回としています。社会人を相手にして23年間続いています。
大学で教えるようになったのは、大学時代の同級生から「知財の大学を作りたいから来て欲しい」と誘われたのがきっかけです。いくつかの大学からお誘いをいただいたのですが、自由にやらせてくれるということと、リーガルマインドを持った知財専門家を育成するという国士舘大学院の考えが、法律系の知識を持った弁理士を増やしたいという僕の思いに通じるところがあったので、国士舘大学に決めました。
これは、長年訴訟に携わった経験から、弁理士にリーガルマインドを持つことが必須と感じたからです。
私は弁理士として現場の状況を把握して法解釈をしてきました。その他にも、大企業から中小企業までたくさんの出願代理や訴訟代理人・訴訟輔佐人を経験させていただき、企業のみならず大学や公設研究所などの知財管理を経験することもできました。
大学ではこの経験を少しでも活かして、就職後に役立つ実践的な法律判断を身につける授業になるよう心がけています。実務家として、大学で学ぶ法律が社会の中でどのように役立っているかを教え、法律を学ぶ意義を理解してもらいます。さらには、純粋学者が教える法解釈としての学説の重要性も理解してもらいます。
私を通して、少しでもリーガルマインドを持った弁理士が増えてもらえれば、教員としてのこれ以上の喜びはありません。
特許出願件数が月に0又は1件ぐらいしかなかった会社に指導に行き、月5件ぐらいまで出願件数を増やすことができるようにその企業を教育したら、その企業の技術に外国企業が注目しオファーがかかり、社長は多額の利益を得て、その企業を外資系企業に売ったことです。
企業を育て上げるということは弁理士としてすごく嬉しいですね。新人教育で知的財産とはこういうものだよ、ということを教えて、開発担当の人たちと接触をして……それが弁理士の専業といわれる明細書作成につながると。
明細書作成という素晴らしい仕事があり、企業の人材教育に携わることができ、必然的に意匠、商標という話があり、外国出願という話に繋がっていく。そして海外で目をかけられる。そういうやり手の社長さんの一緒に仕事ができるのは楽しいですね。
「ゼロから一緒に会社を大きくしていく」夢がありますよね。
「ギブ・ギブアンドテイク」情報を2度与えて1つもらうことと、「顧客第一主義」顧客の立場になってものを考えるこの2つですね。
リーガルマインドを持った知財専門家を日本でたくさん輩出して、弁護士とは違った立場で、経営者と同じ立場で知財を把握できる弁理士をつくっていきたいです。
リーガルマインドを持って、顧客の利益があるところで妥協をして、企業を生き残らせるということを考えられるような。そのために経営も勉強して、といった弁理士を増やしたいです。
事務所としては、今までの単なる出願系の弁理士ではなく、いろんなサポートができる、中小企業支援ができる特許事務所をイメージしています。そのため著作権契約から調査まで様々なことを手がけていかなければなりません。
「見える力」といえばいいのでしょうか、声のコミュニケーションができる事務所にもしていきたいです。
景気が悪いときほど明るい将来を期待し企業は努力します。景気が悪いときに資格を取っていただいて、その資格を使うときまで我慢をしてください。
「花が咲かないものは無い」
常に景気は変動していますし、業界の構図も変動しています。
景気が悪いときに勉強する人は、底辺を知っているので、後で大きく花を咲かすころができます。景気が悪いときほど良い資格を取っていただければと思います。