勝ち残る行政書士

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『勝ち残る行政書士』を目指す
北山孝次先生

行政書士を取り巻く現状 ~行政書士はピンチなのか~

行政書士だけではなく、士業全体が昔のように必ずしも必要とされている時代ではありません。例えば、公的サービスはインターネット等でもまかなえるようになっています。行政書士だけが地盤沈下している状況ではないのです。

我々行政書士は、許認可手続が主な業務です。しかし、各種手続のIT化で自己申請される方も増えています。こういう現状に順応できなければ、行政書士として仕事が出来ないのは事実です。だから、行政書士会連合会では、約15年前からIT化に対応する取り組みを全国で行ってきました。今、行政書士でPCを使わないで仕事をしている方はいない。

業界としては、既にIT化に対応できています

確かに、本人申請の増加で業務の絶対量は減っています。しかし、我々の仕事は、新しい法律ができたとき新しい分野がかなり発生します。そのため、行政書士が扱う許認可数は1万種類以上ありますが、その数はほとんど変わっていません。従って、他資格と比較しても有望な分野が多いのです。その意味では、「時代を見る目」を持つ行政書士、色々な所にアンテナを張って「先見性」を持つ行政書士が、今後は伸びていくでしょう。新しいものに取り組んでいく姿勢がある行政書士にとっては、逆にチャンスなのです

勝ち残る行政書士を目指す ~研鑽とコンプライアンスの確立~

どんな士業も同じですが、やはり国民に信頼されなければ成り立ちません。私は、「勝ち残る行政書士を目指す」ということを言っています。同業者の中で「勝ち残る」のではありません。今現在、様々な資格がありますが、将来的には統合されるか、垣根を低くして相互乗り入れが行われる時代が来るでしょう。そうなっても、「この業務は以前から行政書士に頼むようにしている」と言ってもらえなければいけないのです。これが、私の言う「勝ち残る行政書士」です

また、こういう時代だからこそ、コンプライアンスや倫理観を持つことが大切です。そのためには、業務研修のような場を活用して、絶えず研鑽を積む必要があります。だから、「研鑽」と「コンプライアンス」、この2つを確立できなければ士業として成り立たないのです。こういう基本的な考え方をもって、我々は様々な取り組みを行っています。

行政書士の業務範囲の拡大 ~行政書士の各種代理権~

現在、様々な司法制度改革が行われています。他の士業はほぼ代理権が認められていますが、行政書士だけが取り残されています。平成20年の行政書士法改正により、ようやく聴聞・弁明の代理はできるようになりましたが、但書で「弁護士法72条に抵触できない」とあるので、現実的な有効性はコンプライアンスの視点から注視していかなければなりません。だからこそ、第一段階としてコンプライアンスの確立が必要なのです

また、現在、行政不服審査法における不服申立に関して、行政書士に代理権が認められる方向で法改正が検討されています。これが認められれば、許認可が取消された場合、依頼人の聴聞・弁明・不服を一貫して申立できるようになるのです。これが実現することで、行政書士はやっと一人前です。この不服申立の代理は長年の悲願ですので、何としても実現したいと思っています。

やはり、その申請許可取消し後の全ての処理を行政書士ができるようになると、依頼人の信頼感も我々の業務のやり方も変わってきます。その部分だけ弁護士に依頼するより、これまで関係してきた行政書士が一貫してできる方が依頼人にも利益があるはずなのです。

行政書士の強み(1) ~法律の総合職としての専門家~

行政書士の業務範囲は広く、どこに専門性があるのかなかなか理解していただけません。行政書士は、各分野の専門性を持って業務を行っています。もちろん、司法書士や弁護士と比較して1つ1つの分野の専門家とは言えないでしょう。しかし、法手続きの「総合職」と考えると、専門家と言えるのです。

つまり、依頼人の業務の全体像を把握して、弁護士など各分野の専門家に適切に業務を依頼し、業務をスムーズに完遂に導く調整役・コーディネーターができるのは、我々行政書士なのです。このような意味で、行政書士は「総合職」であると言えるでしょう。

行政書士の強み(2) ~依頼人の法務コンサルタント~

私たち行政書士が一番誇りを持っているのは、「予防法務」という業務を担えることです。他の資格は、事後処理が業務となっています。例えば、税理士は会社として利益が出た後で税金申告という処理を行います。司法書士は、売買後に登記をする。弁護士は、多くは裁判や紛争が起こってからの仕事です。これに対して、我々は事前の手続が主な業務なのです。

例えば、会社設立に必要な許認可を得るための手続です。会社は、仕事をするために設立します。そして、そのための役員構成や会社の目的、その許認可に必要な手続などを総合的に考えながら会社を作っていく。だから、「こういう会社を設立する場合、どうすればよいか」と相談されることも多いのです。

そのときは、「役員はこういう構成でないと許認可がとれない」とか、「小さな会社なら消費税の問題もあるため、資本金は1000万未満のほうがよい」等、様々なアドバイスをしながら会社を作っていく。また、紛争が起こってしまうと弁護士の領域ですが、我々は紛争が起こらないように、いかにスムーズに手続を行うか、その方法を提案していくのです。これを「予防法務」と呼んでいます。

つまり、その業界の知識を前提としたコンサルタント的な業務を行うのが行政書士の強みなのです。

アドバイス ~専門分野の見つけ方~

行政書士として仕事をしていくには、何でもできるのが一番いいのです。私も登録をした頃は勉強するために色々な先生方と関わってご指導いただき、自分でも勉強しました。そして、依頼された仕事は全て引き受けました。様々な業務をこなす中で自分の得意分野を見つけ、そこに集中していく。

だから、自分の得意分野を見つけるまでは、様々な仕事をするべきです。

しかし、これは1つ1つ調べながら仕事をしなければいけないので、効率が悪いです。さらに、一年経つと内容が全く違っている業務もありますから、常に勉強が必要であり、積み重ねがしにくいという現実もあります。だからこそ、最終的には業務の絞込みは必要です。

ただ、やはり法律の改定・廃止は今後も発生するため、3~4つの分野を専門にしていくようなリスクヘッジも大切です

また、専門分野を持つためには、その分野においてある程度の業務量が必要です。例えば、私の分野である建設業は基幹産業ですし、東京では10万を超える業者が存在します。無許可の業者はその3倍あるといわれていますので、需要は必ずあります。どちらかというと、絞り込むというよりも様々な仕事をこなしていく中である程度量が出てきて、それが専門となるのが実情でしょう

行政書士の魅力 ~同業者との連携~

他資格であれば、同業者は普通「商売敵」ですよね。しかし、行政書士に関しては同業者は仕事を持ってきてくれる「営業マン」なのです。つまり、自分の専門外の依頼が来たとき、その分野を専門としている同業者に紹介するのです。以前、私が風俗営業の許可申請を専門にやっていた頃、私の支部の行政書士にその分野の仕事が来たときは、ほとんど私のところに紹介が来ていました。

その行政書士が窓口となり、実務的なことは私が行う。そういう連携ができていました。だから、他の業種に比べたら面白い資格だと思います。結構、同業者同士は仲がいいですよ。

依頼人のニーズを満たす ~行政書士事務所の法人化~

個人開業に魅力を感じて学習を始める受験生が多いので、「一国一城の主」を目指す方が多いでしょう。しかし、1人では知識量や業務処理量が限られますから、大きな仕事をやるのであればやはり連携が必要でしょう。ですから、将来的には「行政書士事務所の法人化」がいいのではないでしょうか。また、個人開業の場合、その行政書士が高齢化していくと依頼人も不安になります。やはり、組織として対応できないと、依頼人のニーズを満たしきれないでしょう。

ただ、法人化する場合には、事業運営がかなり困難です。ですから、今法人化されているところは、親子や兄弟、師弟関係といったつながりがあるところが多いようです。

アドバイス ~行政書士を目指す方へ~

行政書士は、業務範囲が広いことが特徴です。弁護士は何でもできますが、他の資格は専門化されており柔軟さがあまりありません。その意味では、行政書士はどんな時代にも対応できる素晴らしい資格です

将来性がない分野もありますが、新しい分野も沢山あるので、『将来有望』であると言えます。要するに、現実をどちらに見られるかで将来性は大きく変わってくるのです。

エール ~行政書士の明るい未来~

行政書士は、社会経験が活きる仕事です。大学を出て、すぐに行政書士として活躍されている方もいらっしゃるでしょう。それは、それで素晴らしいことです。ただ、色々な会社に勤め社会経験を積んだことが、とてもプラスになる資格です。我々の依頼人は、その多くが中小企業や零細企業です。そのため、人生経験のある方のほうが社長や幹部としっかりとした話が出来るのです。

定年後に行政書士になる方もいます。それから80歳や85歳まで仕事するというのであれば、十分に期間がありますし、対応も可能です。学習に遅いということはありません。

どなたも、是非行政書士を目指して頑張ってください!

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